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PERSONAS 111 - The Art of Wig Making 2017-2020 : Tomihiro Kono

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ヘアスタイルは私たちのアイデンティティと深く結びつき、内面と外面の両方を形作ります。それは私たちの個性を反映すると同時に、ある意味では真の自分を覆い隠すこともあります。ウィッグをかぶることで、私たちは突然別人のように変身することができます。ウィッグは一種の仮面であり、一方では他者に明確な印象を与え、他方では個人の本質を隠すためにデザインされています。外見を変えることは、自己反省、自己主張、そして自己防衛の行為です。私たちは、自らを定義し、他者によって定義されながら、世界の螺旋の中で生きています。河野富弘は、ウィッグを通して、瞬時に変化をもたらす多様な可能性を見出しています。

Hairstyles are closely related to our identity; They create both our inner and outer self. This can reflect our personality or, in some way, can hide our true self. We can suddenly make ourselves look like a different person by wearing a wig. Wig is a kind of mask, designed on the one hand to make a definite impression upon others, and on the other to conceal the true nature of the individual. Changing how we look is an act of self-reflection, self-assertion, and self-defense.  We live in the spirals of the world by defining ourselves, and being defined by the others. Tomihiro Kono finds the diverse possibilities of instant transformations with wigs.

Book Specifications:
Title: 'HEAD PROP' Studies 2013-2016
Author: Tomihiro Kono
Page: 176p Full color / English
Size: 148mm x 210mm
Book Design & Publisher : konom editions

konomad editions No.003

寄稿文] by a Japanese independent artist: Bunta Shimizu

新しい世界

僕は、原宿のとんちゃん通りを抜けた先にある、存在感の薄い2F(いい意味で)古着屋に向かっていた。理由は、偶然そのお店のSNSで河野さんのウィッグが販売されていることを知ったから。 正直その時はそこまで心躍る気持ちでお店に行ったわけでもなかったんだ。ほんの少しだけ、怖いもの見たさもあって見に行った。

僕の頭に最後に髪の毛が乗っかっていたのは6年以上も前。 ずっと坊主で、現在も坊主でいる理由が「髪がすぐ乾くから」だなんて、どこか郊外の町の青年のような思想は決して面では言えない。こんな風に文字以外では。笑

でも、昔は髪の毛に興味がないわけでもなかった。 学生時代に美容室のカットモデルをしていて、マッシュカットにしたり、はたまたツーブロックにしてみたり。 でも、だんだん短髪になっていき、坊主になった。

だんだん短くなっていった理由がもう一つ存在する。 それは、いわゆる「女々しさ」からの脱却だった。

当時、僕は本当に細くて、レディースの服やドレスを着ていたから、皆から「男か女かわからない」「女っぽい」と言われ続けていた。僕のセクシャリティにそういう要素があるわけではなかったし、僕自身のジェンダーは男だ。 だから、その言葉を昔の僕は受け入れることができなかった。ジェンダーレスという言葉に若干の嫌悪感を覚えた。

その状況をどう変えるか、と考えた時「ああ髪を切ろう」となんとなく思った。それが坊主の始まり。

そうしたら、見事にそんなことは言われなくなって、僕は「男性」として衣服を身につけられるようになった実感があったのだけれど、それはそれで何か違和感があった。

その理由が、あのビルの階段を登った後に判明するとは思ってもみなかったのだ。

扉を開くと、見た事のない景色が広がっていた。

舞台『アリー』のような、赤橙のボンバーヘア、横を見ればとんでもないサイズのカラフルリーゼントなどなど、本当に沢山の髪の毛が店内をジャックしていたのだ。

OTOEのボタニカルケミカル(と呼んでいいのかな?)な感覚を加速させるものになっていて、かなりの興奮を覚えている。 そして、レジにいつものスタッフさんとは違う方が立っていた。

FANCY WIG を作っている河野富広さんだった。 彼が、僕に似合うウィッグを見繕ってもらい、被ってみた。

そうしたら、某白い粉(僕は一切やった事がないけれど)なんかよりぶっ飛べるんじゃないかってくらい、どこかにトリップした。 どこか、懐かしいような、ちょっとだけ甘酸っぱいような、、、

学生時代の髪の毛がまだのっかていた頃の自分と対峙したような気分に一番近かったかもしれない。

話が少しずれるが、僕はこの執筆依頼が来た時、断ろうか悩んでいた。 彼との相談の中で、「ジェンダー」という言葉が出たから。 理由は、日本では多様性というものが商業的パワーワードとして扱われ、僕自身がそのアイコンとして扱われかねない状況になりかけたこともあるからだ。 とても馬鹿げているし、日本の政治はそれとは逆行に突き進んでいる。 男性らしさ、女性らしさというものに関して、僕はまだその意識が昔からの教育されていたから冒頭のような感情に僕は陥ったのだろうから、向いていないだろう、とも思った。 (僕は見た目も派手だし、はっきりとした場所に属しているわけでもない、そして仕事も様々なことをやっているから) それに、僕は良い子ではないし、大人の思惑に乗っかるつもりもない。ただ、この依頼をしてくれた河野さんが新しい世界を見せてくれたのなら、お返ししようと思った以外に他ない。そして、彼は純粋にFANCY WIGを広め、人を解放し、広まって欲しいという、綿菓子のようなピュアな気持ちも見えたから。(僕の知らない一面が存在するのかもしれないけど。笑)

店を出る前に、その場で買った、ひよこのような黄色モヒカンウィッグを身につけて、扉を開けた。 ほんの少しだけウキウキしながら、新しい世界へ飛び出す。

そこには、いつもとほんのちょっと違う景色が広がっていた。 いつもと同じ舗装道路で、いつもと同じ信号を渡っているのに、ほんの少しだけ、違うんだ。

それは、周りが変わったんじゃなくて、僕が変わったんだ。
また、新しい髪の毛を手に入れたら、また、僕の世界は広がるかな。

人生って楽しい、自由な世界。

清水文太 @bunta.r

プロフィール

スタイリストとして、19歳から水曜日のカンパネラのツアー衣装や、芸能人、テレビ・企業広告のスタイリング、Benettonをはじめとしたブランドのアートディレクションを手掛ける。コラムニストとして雑誌「装苑」の連載などに寄稿。11/20にアルバム「僕の半年間」を発売。RedbullMusicFesでのDJ・ライブ出演など、アーティスト・スタイリスト・アートディレクターとして多岐にわたる活躍を見せている。

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